農業の作業安全のための規範

トラクターに乗る農家のおじさんのイラスト

3月14日付の日本農業新聞(Web版)で

「作業安全規範を策定 『いのちを守る』最優先 農水省」

という記事を見つけました。

この記事を読んで「JGAP認証に通じるなあ」と思ったものです。

実際、農水省のHPから

「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範(個別規範:農業)
事業者向け チェックシート」

をダウンロードして内容を見てみると、まさにGAPの管理点です。

農水省の発表によれば、令和元年の農作業中の死亡事故に限っただけで281人に上ります。

※農水省「令和元年に発生した農作業死亡事故の概要」より

これは週に6日、全国で1人くらいの割合で農作業中の事故で亡くなっているくらいのペースです。

死亡に至らなかった事故も含めれば、さらに多くの方が何らかの事故に遭われていると想像できます。

死亡原因としては、農業機械作業中の事故が圧倒的に多い(全体の65.5%)のですが、施設作業中の墜落や転落事故や、熱中症の多さも見過ごせません。

65歳以上の方の割合が約88%と高いのですが、これは農業人口の高齢化という課題を考えると、当然の結果ともいえるかもしれません。

しかしながら、今後、農福連携や未経験者や外国人の就農のことを考えると、これまで以上に作業の安全対策を講じる必要は高いと思います。

御自身の農場の安全対策がどのようなものか、一度振り返ってみる機会にする意味でも、この規範とチェックシートをダウンロードして活用されてみてはいかがでしょうか?

詳しいことは、下に農水省のHPへのリンクを貼りましたので、そちらを御覧ください。

農林水産省の、農業者向けの作業安全のための規範のHP

農林水産省の、農林水産業・食品産業の作業安全のための規範のHP

※ 画像は「いらすとや」から

農業版BCP~農水省

自然災害の中で心配をする米農家のイラスト

2月12日の日本農業新聞(Web版)を見ていたら、「農水省が農業版BCPのひな型を作成し、HPから入手できる」という記事がありました。

ちなみに、BCPとは、日本語で事業継続計画と言い、

災害に見舞われた後、できるだけ早く事業を復旧させるために、平時に、防災計画と復旧計画を立てて準備活動を行うことです。

PDCAサイクルのイラスト

というわけで、早速、農水省のサイトで、ひな型やパンフレットなどを入手しましたよ。

農水省 : 自然災害等のリスクに備えるためのチェックリストと農業版BCP

農水省が用意していたひな型は、大きく分けて

  • リスクマネジメントのチェックリスト
  • 事業継続に関わるチェックリスト

の2つのExcelファイルから成ります。

さらに、これは、耕種用、園芸用、畜産用の3つの類型ごとに用意されています。

上の2つのチェックリストの内、「事業継続に関わるチェックリスト」に、農業版事業継続計画書のひな型が含まれているという仕組みになっています。

これらとは別に、チェックリストなしの「事業継続計画書(簡易版)」もあります。

私がサラッと見た感想からすると、

  ① チェックリストに従って、現状を把握する。

  ② 現状を把握した上で、事業継続計画書を作成する。

という流れの方が良いだろうと思いますし、これが本来のBCPの在り方だとも考えます。

BCPは「災害に備えて」と説明されることから、ともすれば「台風や地震などの自然災害への対応」と考えがちですが、そうではありません。

例えば、現在の新型コロナ感染症のような事態にも対応できるようにするのがBCPです。

実際、畜産編のリスクマネジメントのチェックリストには、鳥インフルエンザや豚熱を想定している項目もあります。

以下は、私の勝手な考えです。

認定農業者になるためには、農業経営改善計画を作成しますよね?

この農業経営改善計画の中に、

  • 生産方式の合理化
  • 経営管理の合理化

に関わる記入欄があります。

ここに「BCPを作成し、実施する」というようなこと、あるいはBCPの中に具体的に記入した内容を記入しても良いのではないかと思うのです。

というのも、生産方式の合理化や経営管理の合理化の記載例に「GAPの導入」というのがあるからです。

BCPを作成することで、認定農業者として認められるかどうかはわかりませんが、

BCPは災害などに強い事業にするための計画

であることから考えると、

BCPを作成し取組むことは、つまり強靭な経営体になる

ということですから、それは

すなわち経営改善につながる

と、私は思うのですが・・・。

以上はともかくとして、BCPに取組むかどうかは別にして、一度、農水省のHPを御覧になられてはいかがでしょうか?

※この投稿の画像は「いらすとや」より

リスクの分析~GAP

JGAPやASIAGAPの管理点で、様々な場面でのリスクを洗い出し、評価をし、対応を検討することが求められています。

これはGAPに限らず、防災を考える上でも、他の多くの企業のリスク管理をする上でも大切なことですが、非常に難しくもあります。

なかでもリスクの洗い出し=リスク分析は思いのほか難しいと、私は思います。

難しさの一番の原因は

人の「思い込み」あるいは「安心願望」にある

と思います。そして、それ自体は決して責められるところではありません。

例えば、

「新規にトラクターを購入する」

という場面を考えてみてください。(購入するかどうかを、検討する場面)

私は、ここに「検討すべきリスクがある」と考えます。

トラクターの運転経験がない、あるいは少ない方なら感じる不安=リスクを、ベテランの農家は、もしかすると「今まで事故無し」であったことから見逃してしまう事かもしれません。

だから、GAPなどでリスクの分析をするときは、

何人かの人と一緒に

  • 有り得ないかもしれないことも言う
  • 他人の発言を否定しない
  • 茶飲み話をするような気楽さで話す

というルールの元に、アイディアを出し合った方がよろしいかと思います。

できれば、年齢や性別や立場や生産している作物等が異なって人たちのグループの方が、発想が柔軟になるでしょう。

八百屋と産直市場のHACCP

改正された食品衛生法は、すべての食品事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理を義務化しました。

HACCPというのは、簡単に言えば食中毒や異物混入などの食品事故を起こさないための取組みです。

HACCPをやっている食品事業としては、「レトルト食品や缶詰・冷凍食品などを作っている工場」というのが、以前の私の持っているイメージでした。

けれども、今年2020年6月から施行され、来年2021年6月から完全実施される「HACCPに沿った衛生管理」をしなければならない食品事業者には、街の小さな八百屋さんや農産物直売所なども含まれます

こんなことを八百屋の威勢の良い親父さんに言えば、

「何言ってんだい!こちとら何十年もここで商売をやってて、一度だって食中毒をおこしたことなんてないんだ!こちとら信用で成り立つ商売やってんだ!四の五のいってねぇで、とっとと帰りやがれ!」

と怒られそうですが・・・。

もちろん、これまでの方法でもかまいません。

HACCPが求めているのは、その方法を文書にすることと、実際にやったことを証拠として保存することです。

もう少しだけ、くわしく説明します。

八百屋や直売所に求められるHACCPにそった取り組みは、おおまかに言えば次のようなことをすることです。

① あらゆる食中毒や異物混入を防止するための、衛生管理計画を作る。

② 衛生管理計画を、経営者・従業員全員で実行する。

③ 実行したこと、あるいはその結果を記録に残し、保存する。

この3点について、少しだけ注意事項を示します。

① 衛生管理計画

衛生管理計画は、仕入から販売まで(商品の保管も含みます)の商品の取り扱いの注意事項や、店舗や従業員の衛生管理も含みます。

言い換えれば、食中毒や異物混入を防止するための、お店のルールを文書にします。

② 実行

①の衛生管理計画に書いたルールを、パートやアルバイトを含めた全員がやりとげることが大切です。

もし、ルールを徹底できないときはどうするか?

そのこともルール化します。

③ 記録と保存

記録は基本的に文書化します。パソコン等で作成してもかまいませんが、すぐに確認できる状態にしておくことが大切かと思います。

①から③のHACCPに沿った衛生管理の実施状況を、保健所の食品衛生監視員が確認することがあります。

ですから、記録した文書は1年以上は保管します。

八百屋や直売所が取り組むHACCPについて、より詳しくは、

一般財団法人 食品産業センター

厚生労働省

のどちらかから、手引書をダウンロードして御覧ください。

なお、当事務所では、この手引きにある計画書や記録用紙をもとに、お店にあった様式を作成、またはお手伝いします。

御希望の方はメールでお問い合わせください。

<生産者の方へ>

上のように、すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理とその記録が義務付けられます。

これは八百屋や直売所だけでなく卸売業者や仲卸も、HACCPに沿った衛生管理をやらなければなりません。

その衛生管理は、食品の仕入れ段階から始まります。

したがって、もしかすると、農産物の納入・搬入じの検品が、これまで以上に厳しくなったり、これまでは求められなかった書類を添えなければならなくなるかもしれません。

そのことも念頭に置いておいた方がよろしいかと思います。

整理整頓②~GAP的取組1

前回は、整理整頓の目的について、私なりに考えを整理しました。

項目だけ振り返ると、次の4つの目的を意識しましょうという提案です。

  • 農産物を守るため。
  • 働く人を守るため。
  • 環境を守るため。
  • 農場の経営を守るため。

今回は、整理整頓を心がける場所です。

整理整頓は上記4つの目的のために行うので、「毎日、作業の後片付けをする」ということだけでは足らないと思います。

作業中も整理整頓を心がけることが大切です。

ですから、整理整頓を心がける場所としては、具体的に書けば次の5つになります。

  1. 圃場およびその周辺
  2. 農産物取り扱い施設およびその周辺
  3. 倉庫
  4. その他の施設
  5. 運送・運搬の器具・機械

1.圃場およびその周辺

田、畑、ハウスの中はもちろん、その周囲にも気を配る必要があります。

病害虫、鳥や動物、雑草といったものからの農産物への被害を防ぐことはもちろん、農薬や肥料が周囲に影響を及ぼしていないかどうか早めに気づくためでもあります。

2.農産物取り扱い施設およびその周辺

選果場や出荷前の農産物を保管する倉庫などの農産物取り扱い施設。農薬やハエや蜂を退治するための殺虫剤が農産物につかないように、肥料、病原性の細菌が繁殖しやすい水滴がたまったりしないように、昆虫やゴミあるいはタバコ灰などの異物が混入ないように細心の注意をはらわなければならない場所でもあります。

3.倉庫

農薬や肥料、農業機械などを保管する倉庫。ここは働く人の安全や、在庫管理のしやすさが大切なところ。何より農薬の管理を徹底したい所でもあります。

4.その他の施設

作業途中に使うトイレ、休憩所、燃料等の保管場所、堆肥等仮置き場、ゴミ倉庫なども4つの目的達成のためには大切な場所です。

5.運送・運搬具の器具・機械

整理整頓というより清掃を心がける場所といった方がよいでしょうか?

例えば軽トラの荷台。様々な道具や農産物等を入れて持ち運ぶコンテナボックス。

農産物を汚さない、傷つけない。ケガをしない。

常にそうあるためには、どのように整理整頓あるいは清掃をすればよいのでしょうか?

・・・以上のように書くと、すごく面倒くさく思えてきます。

しかも整理整頓は、そこで働く人全員が心がけ実践しなければ意味がありません。

だから、働く人みんなで知恵を出し合って

「4つの目的を達成するために、かつ、できるだけやりやすい方法」

を工夫し続けることが重要なのだと思うのです。

そしてその取組自体が、実はGAPなのです。

整理整頓①~GAP的取組1

GAP(ギャップ)とアルファベットで表すと、何だかとっつきにくく感じませんか?

先日、農協のGAP担当の方からもうかがったことなんです。JGAPやASIAGAPの管理点の多くは、農家が普段行っていることがほとんど利用できるのだそうです。

例えば、今回のテーマは「整理整頓」。

これだって、GAPの認証の有無に関わらず、すべての農家が行っていることです。

ただ「何のために整理整頓するのか」「何に注意して整理整頓するのか」「パートさんや技能実習生も含めた農場で働く人全員が同じ水準で確実にできるのか」を意識して行うことが大切なんです。

普段、何のために、何に注意して整理整頓しますか?

整理整頓の4つの目的を御紹介します。

この4つの目的を達成するために、具体的にどのように整理整頓をしていますか?

整理整頓の4つの目的

① 農産物を守るため。

丹精込めて作った農作物。消費者に喜んで食べてもらいたくないですか?

そのために、次の3つのモノが農作物に付着しないように、整理整頓をしてほしいのです。

  • 残留農薬や肥料
  • 病原性の細菌
  • その他の異物

※細菌がつかないようにするために、水滴(結露した雫など)や土が収穫した農作物(土付きで出荷するものを除きます)につかないように。

※蛍光灯が割れた時のガラス片、掲示物を貼っていた画びょう、容器や用具の破片、昆虫、動物の毛など、農産物に紛れてほしくない異物はいろいろです。

② 働く人を守るため。

農場で働く人の病気やケガの防止のために整理整頓しましょう。

元気に長く、楽しく働いてもらうため。

また、働く人を守ることは農作物を守ることにもつながります。

③ 環境を守るため。

農薬や燃料、肥料が漏れ出てしまって排水や土を汚してしまわないように、整理整頓をしましょう。

④ 農場の経営を守るため。

農業機械や資材の管理をしやすくするために、整理整頓をしましょう。

点検や在庫の把握がしやすくなれば、労力も省けますよね。

それに、農業資材の仕入れもより計画的にできるのではないでしょうか?