農地所有適格法人

根拠法:農地法 (その他に農業協同組合法、農業経営基盤強化促進法)

法人が農地を所有するためには、「農地所有適格法人」の要件を満たしている必要があります。

※賃貸借や使用貸借の場合はいくつかの条件を満たせば、農地所有適格法人である必要はありません。NPOや社会福祉法人、学校法人でも農地を借りて農作物を栽培することができます。

法人の種類

農地を所有することができるのは、次の3種類の法人だけです。

A : 農事組合法人

B : 株式会社(ただし、非公開株式会社に限ります)

C : 持分会社

A:農事組合法人

根拠法:農業協同組合法第72条の10

農事組合法人は、次の2つに分けられます。

  • 1号法人:農業に使う施設や機械を共同利用したり、特定の農作業(田植えや稲刈りなど)を共同でする法人。
  • 2号法人:農業の経営を行う法人(農業経営農事組合法人といいます)。

農地所有適格法人として農地を所有できるのは、2号法人の場合です。

農事組合法人については、こちらを御覧ください。

B:株式会社

農地を所有するためには、すべての株式が非公開であることが必要です。

<株式が非公開であること>

すべての株式の譲渡や取得の際に、会社の承認を要する定めが定款に明記されている場合に、「非公開株式会社」と言います。(会社法第2条第5号から)

会社の承認とは、

  • 株主総会の決議
  • 取締役会設置会社では取締役会の決議
  • その他、定款の定めによる方法

のいずれかによらなければなりません。

会社法第139条

※株主総会による決議

  • 議決権の過半数を有する株主が出席すること。
  • 出席した株主の議決権の過半数を得ること。

 ただし、定款に別段の定めがある場合には、それによります。

会社法第309条

 また、株式を会社が買い取ったり、買い取る者を指定す場合には、出席株主の議決権の3分の2以上の多数決による特別決議になります。

会社法第309条2項

C:持分会社

会社法第575条~

持分会社には3種類ありますが、利用しやすいのは合同会社かと思います。

なぜなら、合同会社の社員(株式会社における株主のような存在)の責任が有限であることから、「設立や運営が楽な、小さな会社」感覚だからです。

ただその分だけ、株式会社より社会的な信用力は軽い印象があります。

社員の持分(株式のようなもの)を他人に譲渡する時は、他の社員全員の承諾が必要なので、非公開株式会社のような仕組みになっています。

※業務を執行しない社員の持ち分の譲渡は、業務を執行する社員全員の承諾があれば足ります。

農地所有適格法人の要件

必要な要件は、次の4つの項目(農事組合は2を除く3項目)に関する条件をすべて満たすことです。

  1. 主たる事業の目的に関する要件。(事業内容の要件
  2. 株式会社の株主、持分会社の社員に関する要件。(議決権の要件
  3. 役員総数に対する、常時従事者の割合に関する要件。(役員の要件
  4. 役員の中の常時従事者の農作業に関わる日数に関する要件。(農作業の要件

1.事業内容の要件

その法人の主たる事業が農業 または 次の農業に関連する事業であることが必要です。

農業に関連する事業として認められるもの

その法人が生産した農畜産物を原料または材料として

  • 製造
  • 加工
  • 貯蔵、運搬、販売
  • 農業生産に必要な資材の製造(例:堆肥や飼料)

を行ったり(他の農家が生産した農産物を加えて製造等をしてもかまいません)、

  • 農作業の受託
  • 農村滞在型余暇活動に利用される施設の設置や運営

など

主たる事業として認められるために

直近3か年の農業の売上高が、法人全体の売上高の過半を占めていること。

※新規に就農する場合は、今後3年間の事業計画で判断されることになると思います。

2.議決権の要件

次に該当する株主の有する議決権の合計が、総株主の議決権の過半数を占めていいること。

(持分会社の場合は、次に該当する社員の合計が、社員全員の過半数であること)

  1. その法人に農地等の所有権や賃借権等を移転した個人など
  2. その法人に農地等について賃貸借や使用貸借をさせている個人
  3. その法人に農地法第3条第1項の許可を申請している個人
  4. その法人に農地等を使用させている農地バンク(農地中間管理機構)に、その農地を提供している個人
  5. その法人の行う農業に常時従事する者※
  6. その法人に農作業の委託を行っている個人
  7. 現物出資を行った農地バンク
  8. 地方公共団体または農協

以上を大雑把にまとめると、その法人に農地を提供したり、その法人で農業に携わる人が株主や社員の過半数を占めていることが条件です。

※5の「常時従事する者」の判定条件

次のいずれかに当てはまる

① その法人の行う農業に年間150日以上従事すること。

②その法人の行う農業に従事する日数が年間150日に満たない者にあっては、最低60日以上で、農水省の計算式を満たす日数

③その法人に農地を提供している者で、年間60日に満たない者にあっては、農水省の計算式を満たす日数

3.役員の要件

下の表の、常時従事者たる構成員の数が、理事等の数の過半数を占めていること。

つまり、役員の半数以上が、法人の行う農業に原則年間150日以上従事する構成員であること。

 

  常時従事者たる構成員 理事等
農事組合 組合員 理事
株式会社 株主 取締役
持分会社 社員 業務執行社員

4.常時従事者の農作業に関わる日数

常時従事者である理事等(または農業に関する責任を有する使用人)のうち、1人以上の者が、原則として60日以上、その法人の行う農業に従事すること。

その他 ・ 注意事項

農地所有適格法人の要件は、以上の通りですが、農地法第3条許可要件や、農業経営基盤強化促進法との関連を見てみる必要があります。

農地所有適格法人報告書

農地所有適格法人は、農地を所有している間、毎年、農業委員会に報告書を提出する義務があります。

報告書を提出しなかったり、虚偽の報告をした場合には30万円以下の過料に処せられます。

※農地法第6条、第68条

農地所有適格法人の要件を満たせなくなった場合

まず、農業委員会は、上記の報告書によって「要件を満たせなくなる恐れがある」と認めた場合には、法人に対して必要な措置をとるように勧告します。

※農地法第6条2項

この場合、農地の所有権を譲渡することになると思われます。